杉本博司「肉声」@草月ホール
「しょせん杉本博司氏の専門は写真、なのでお芝居(しかも現代劇)なんて」
多分この写真を加工したものと思われます。
以下、作品集からの引用。
※ゆがんでてすんません。

目黒区にあったようですが、現在は取り壊されており、現存しないとのこと。
で、この作品集には当時の写真やら平面図、立面図も掲載されていて、思わずじっくり見てしまったのですが、リビング(客間)がやたら豪華で、夫婦の寝室に浴室が隣接していたり、子ども部屋が4.5畳しかなかったり。あと、何と言ってもすごいのはあのプールですよねw たぶん20mぐらいある。そして、なんと飛び込み台までついていて、台のあるあたりは水深をかなり深く設計してある。そして、コルビジェのサヴォワ邸を彷彿とさせる屋上庭園。
素敵だし豪華だけど、ちょっと特殊で、なんだかファミリー向けではないような・・・。
で、調べてみたら・・・・案の定、「妾宅」でした。
そういえば杉本氏か平野氏のインタビューで、堀口捨己が妾宅を設計していて、そのお妾さんが水泳やフェンシングを趣味とする当時のモダンガールだった、みたいな話をしていましたが、まさしくそのお妾さんの家があの背景写真に使われていた邸宅だったんですね。
で、堀口捨己の作品集をじっくり見ていると、堀口捨己の住宅、面白いんですよね。どんどん堀口捨己の世界にハマっていっちゃってw
調べてみたら、「紫烟(しえん)荘」(1926)や、「岡田邸」(1933)、「若狭邸」(1939)はいずれも妾宅とのこと。。
ええええ。そうなのーーー(当然ながら、そんなことは鹿島出版の作品集には書かれていない)。
で、作品集で上記の3つの住宅を見つつ、こんな豪華な妾宅を建てるお金持ちが居たんだなとか、ここにお妾さん(とその一家)が・・・とか想像すると、面白くて。
そんなこんなで、堀口捨己作品集とか見てしまったおかげで、「肉声」も完全に堀口捨己建築の文脈で捉えるようになってしまいましたw
堀口捨己のあの一連の妾宅のうち、あの巨大なプールのある旧若狭邸にはこんな愛人が住んでいて、戦争があって、電話でこんな会話をして・・・。建築の中の架空の物語をお芝居「肉声」で観させてもらった。
さらに、それは建築からのアプローチではなく、あくまで演劇からのアプローチで、いろいろ辿っていくことで、建築を含めた(建築側から見た)印象にたどり着いた。
そこがまた稀有な体験というか面白かった!
関係ないですが、劇のラストに「極楽」という台詞が出てきまして。どちらかの世界が「あの世」とも解釈できる。あと、草月ホールの1階のイサムノグチの石庭が「天国」ですから、リンクしてるのかなあと思いましたが。深読みしすぎですかね。。
杉本氏の次回作は「利休-江之浦」。堀口捨己は、茶室の研究で有名な人ですからね。繋がっています。次回作、観たいけど、熱海のMOA美術館ですからね、ちょっと遠い・・・・。
冒頭の写真は、私の頭の中に残る「肉声」のイメージをコラージュしたものです。「ロスト・ヒューマン」の世界にも通じる部分もあるので、オウムくんにも再登場いただきました☆
「肉声」の脚本全文は新潮12月号に掲載されています。
元ネタであるコクトーの戯曲「声」は、デュラスの作品とセットで光文社古典新訳文庫から出ています。読みましたが、まあまったく違う作品でしたw でも面白いです。
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