速水御舟の全貌展@山種美術館
少し前のことになりますが、山種美術館で「速水御舟の全貌展」を観てきました。
とてもとてもよかったです!
速水御舟って部分的には見ているけれど、これだけの数をまとめて観るのは初めてで。
で、まとめて観ると御舟という人がいかにいろんなことに挑戦してきたかが分かる。
もう西洋画的な試みも琳派も古典日本画的なモチーフも。。
ホントあらゆることをやってるし、やってることが全部「攻めて」ます。
私はあの「炎舞」のイメージからか、長生きした作家をイメージしていたのですが
なんと40歳で亡くなっているんですね。
40歳で亡くなったとは思えない画業・・・マジすごいです。
まず展覧会の会場に入ってすぐのところにある
「鍋島の皿に柘榴」
とか・・・。
絹本に描いているのに、なんじゃこりゃのリアル静物画。
しかもよく観ると、鍋島の下側の脚のところはホントは下からじゃないと
こんな風に見えないはずなのに、シッカリ描かれているし(キュビズム入ってます)。
精密かつアバンギャルド。
「洛北修学院村」の青いけぶるような景色(若干印象派)。
個人的にツボだったのは「あけぼの」。
これは朝の風景を描いたものらしいのですが
私は、子ども時代の冬の夕暮れを思い出しました。
あのうすーい赤色、薄暮、なんとも言えない色合いに
思わずポストカードを購入。
そして、やはり迫力があったのは「炎舞」「翠苔緑芝」「名樹散椿」。
この3つを同じ展覧会で見られる至福。
昨日の日曜美術館で森村泰昌先生が言ってましたが
「炎舞」の背景の色って、黒ではないんですよね。若干、朱を帯びていて
羊羹みたいな色なんですよ。いわば「豊穣の闇」。
→陰翳礼讃で谷崎が言ってた「闇」とかにも通じますね。
で「翠苔緑芝」はいわゆる琳派的なパーっとした華やかな金(金箔を使っています)。
そして、「名樹散椿」はもう少しマットな感じで光としての金(まきつぶしを使っています)。
これらの闇と光が様々な技法で展開される。
特に「翠苔緑芝」「名樹散椿」は並んで展示されていますので、これらの違いがよく分かると思います。
※しかし、昨日の日曜美術館の森村先生の解説、秀逸だったなあ。
森村先生が、過去に、フェルメールやレンブラントの作品を題材に作品を作っていたり
著書も買いていたりすることを踏まえると、ホントさすがな見方だなあと思いました。
あと、「炎舞」はよく見ると下の方の炎をが記号みたいなんですよね。
模式化された炎なんですよ。リアルじゃない。
でも、それが燃え上がって、煙になって光を放って蝶々が舞って
あの幻想的かつリアルな美しさを醸し出している。
それがまたすごいなあと思いました。
あの「炎舞」の色もいろいろ試行錯誤してようやく出せた色のようで
御舟自身「もう同じ色では描けない」と言ったとか。
展覧会の作品、どれもよかった美しかったと思ったのですが
上記のエピソードも踏まえ思ったのは
御舟って「描いて描いて、あがいて。ねっとりと努力して描く人だったんだなあ」と言うこと。
いや、居ると思うんですよ。例えば、竹内栖鳳みたいにほーーーんと絵が上手くてサラサラサラっと描けてしまう人。御舟も絵はうまかったと思うんですが、でも、栖鳳みたいなタイプではなかったと思うんです。努力して努力してああでもなくこうでもなく・・・と試行錯誤して、ようやく作品が出来上がる。そういうタイプの人だったのではないかなあと、あの「炎舞」や、冒頭の「鍋島の皿に柘榴」の筆遣い(といっても緻密過ぎてホントに筆遣いとかもよく分からないんですがw)を観て思ったのでした。
展覧会鑑賞終了後、ほくほくした気持ちで「カフェ椿」へ。
例によって、作品をモチーフにした和菓子購入。
迷って迷って・・・
「炎舞」のお菓子と・・
「翠苔緑芝」のお菓子を購入


特に「炎舞」は懐紙をセットでデザインされているのがホント素晴らしいな~と思います。
もちろん味も素晴らしい!大満足です。
調子に乗って「翠苔緑芝」のお菓子も自作してしまったので、それは別エントリで紹介します。
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