
先週の日曜日、埼玉県立近代美術館で、小村雪岱展に行ってきました。
いやー、これが素晴らしくて!
まず冒頭に明治学院大学の山下先生の講演会を拝聴し、それから展覧会を見たのですが、益々雪岱が好きになりましたね。
一番最初に小村雪岱の絵に惹かれたのは、同美術館でジェームズタレル展を見に行ったときでした。1998年だったと思います。
帰りに売店でポストカードをみていたら、なんだかとってもいい感じの日本画のポストカードがあって、それが雪岱の「青柳」「落葉」「雪の朝」でした。
間のとり方とか空間とか、なんともいいデザインなんですよ。人は誰もないのに、気配を描いている。そして空気を描いている。
ポストカードのサイズでも、その絵の雰囲気が思わず目に飛び込んできて、購入しました。以来ずっと私のポストカードコレクションとして大事にしてきました。
で、今回、雪岱の展覧会で彼の作品をまとめてみたんですが、泉鏡花の本の装丁作品、小説の挿絵、舞台美術等、もともと資生堂のデザイナで、かなりデザインよりの仕事が多い人なんですね。
これはちょっと意外でした。
それらの仕事も本当にいいのですが、やっぱり一番ぐっときたのは、青柳をはじめとする季節の連作
「青柳」「落葉」「雪の朝」
でした。
現物をみたのは初めてなんですが、本当に美しい。
泣きたくなるほど美しい。
・・・っていうか、実は泣いちゃったんですけどね・笑
ここに描かれているのは、人のぬくもりとか気配のようなもの。
人物は一切描かれていないのに、そのむこうにある人の気配がちゃんと描かれているんです。
誰かを訪ねて家に行ったとき、確かに人は居るはずなのに何かの用事で席をはずしていて、でもちゃんとその人の気配が残っているような。
寒い日の夜、家路に向かうとき、シンとした空気の中で、家の灯が見えて、「ああ、あの家の向こうには温かな人のぬくもりがある」そんな感じとか。
雪岱のこれらの連作って、子どもの頃の自分の気持ちを呼び覚ますんですよね。
子どもの頃っていろんなことが分からないから、五感とか、雰囲気とかで感じるしかないん。
で、分からないから不安もいっぱいあるし、あと、人恋しいし・笑
雪岱には、そういう気持ちを呼び覚ます力があると思いました。
展覧会の会場には、雪岱の言葉みたいなものも展示されていたんですが
「私が描きたいと思う女は、その中に、自分と同じ心象を見出した女だ」
みたいなことが書いてあって、ぐっときました。
そう、雪岱さん、わたしもあなたの絵の中に、わたしと同じ心象を見出しているんですよ。
あなたが絵を描いているときに持っていた心象、それをわたしも絵をとおして共有しています。
そんなことを心の中でつぶやいていました。
この展覧会、本当にオススメですので、時間があればぜひみてほしいです。
2月14日まで。
あと、いま発売中の「芸術新潮」もかなりオススメです!
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